失いたくないから大切なものを作れない「ホットロード」紡木たく

“夜明けの蒼い道 赤いテイルランプ 去ってゆく細いうしろ姿 もう一度あの頃のあの子たちに逢いたい 逢いたい……” 
母親と2人で暮らす14歳の少女・和希。親の愛に恵まれず、行き場のない不満を抱える彼女は、ある日、刹那的に生きる暴走族の少年・ハルヤマと出会う。どこか似たもの同士の2人は、いつしか互いに惹かれあっていき…。


普段読んでいるマンガがいかに説明がたくさんついてわかりやすいものなのかを改めて感じる。連載開始は1985年。バナナフィッシュ(1985年)とかMARS(1996年)もそうだけど少し前の漫画って読むのにも、ものすごく頭をつかう。時代柄なのか作者の感じなのか。いくえみ綾も河原和音もちょっと前だと今よりさらに説明が省略されているイメージ。

とにかく余計な描写が一切なくて、はっきりと情緒は残って、感情だけが強く押し出された光景は印象的で、とても眩しく、難しい。

これをよく映画にしたなあと思ってすごく興味がわきました。しかも主題歌尾崎豊。


すごくすごく好きだったはずの彼女にフラれた勢いで和希にちょっかいを出した春山ですが、どこか似ているところを感じながらも自分にない綺麗な部分にどんどん惹かれていって、壊したくなくて。

自分のやりたいことに付き合って和希の人生を変えてしまうのも怖いし、大事なものがあるから、やりたいことができないっていう状況になるのも嫌で、和希が彼を強くも弱くもするのです。

それでも春山のNIGHTS人生が強制終了される前に、「もう心配はかけない」ことを自ら決めて。


中学生・高校生ってやっぱり家庭と学校が全てで、そこに問題を抱えてしまうとどうしようもなくなってしまう。まだ14歳と16歳の彼らが抱えているものは、その年齢にしたらとてつもなく大きなものなんだと思います。逃げる先があって、そこから客観的に自分や家庭・学校を見つめる機会があって、きっと担任の先生や友だちのお母さん、春山のお母さんの言ってることも、大人になってからまた違う感じに響くんじゃないでしょうか。


オレがいなきゃなんにもできねーよーな女になるな。